【整体師解説】自律神経失調症が原因不明と言われる理由とは?
2023.10.20
自律神経失調症
自律神経失調症でお悩みの方へ
1. はじめに
自律神経失調症でお悩みの方は、今、何万人といらっしゃいます。
自律神経のトラブルは幅広く、
うつ、頭痛、吐き気、めまい、イライラ、ホルモンバランス、内臓機能の低下、血圧コントロール、動悸などの「もしかして病気かも?」と不安になるものもあれば、
腰痛、肩こり、首こり、背中の張り感、手足のしびれと言った、痛みしびれの明確な症状として現れるケースもあります。
自律神経は身体の様々な働きのことを意味しているので、心臓を動かすのも自律神経ですし、筋肉を動かすのも自律神経です。
自分で意識しなくても勝手に身体がやってくれていることが自律神経だとするなら、身体に起こることのほとんどすべては自律神経が関わります。
その為、自律神経失調症というのは、現実的には「原因がよくわからないけど不調」という状態を指す言葉でもあるのです。
しかし、それでは困りますよね。
自分の不調の原因が「自律神経失調症です」と言われたものの、ではその原因は?となった時に「原因はよくわからない」で片づけられてしまっては、これからどう改善していけばいいのかわからず、途方に暮れてしまいます。
自律神経専門整体として、多くの方が自律神経の乱れからくる不調を訴えてご来院されます。
当院にお越しになる前に病院で診断を受ける方がほとんどですが、その中で「私の自律神経失調症の原因は〇〇です」とはっきり言える方は今のところほとんどいらっしゃいません。
それはつまり、病院でも原因がよくわからないということです。事実、医療関係のサイトや記事を見ても、次のような表現でしか書かれていません。
“自律神経失調症は何らかの原因で自律神経の機能が乱れることによって起こります。”
(引用元MedicalNote「自律神経失調症」)
https://medicalnote.jp/diseases/%E8%87%AA%E5%BE%8B%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%A4%B1%E8%AA%BF%E7%97%87
「何らかの原因で」というのは、原因がわからないということです。
ここを、人によっては「ストレス」と表現していたり、「生活習慣」「人間関係」「考え方」と言い方は変わりますが、共通して明確な原因は不明です。
これは病院や医療機関が悪いとかの話ではなく、現在の医学ではまだ自律神経失調症の原因は解明されていない、ということです。
しかし、現実には自律神経失調症と呼ばれる不調はあり、それでつらい思いをしている方もいらっしゃいます。
ここからが本題です。
では、自律神経失調症であることはわかって、その原因がわからない、という時に、私たちはどう対処すればいいのか?
自律神経専門整体の整体師としての経験と身体の仕組み、実際のお客様のお声を合わせてお話していきます。
自律神経失調症でお困りの方は、是非読み進めていってください。
2. 自律神経とは?
自律神経について簡単におさらいをしていきます。
恐らくこのブログを読まれている方は、すでに自律神経について調べたりお医者さんから説明を受けている方が多いと思いますが、整体師目線でわかりやすく言い換えていくので一緒に確認していきましょう。
自律神経とは、身体の様々な働きに関係する「スイッチ」のようなもので、交感神経と副交感神経の2種類に分けられます。
交感神経はいわゆる「アクセル」のようなスイッチで、身体が活発に動く時にONになります。
副交感神経は「ブレーキ」のような働きで、身体を休ませる時にONになります。
自律神経が乱れているという時は、このスイッチの切り替えがうまくできていない状態です。
スイッチの切り替えを担当しているのは脳の中枢にある脳幹と呼ばれる部分です。
ここが身体で一番偉い立場にいるのですが、脳幹がスイッチの切り替えの判断を間違ってしまうと自律神経が乱れてしまいます。
その判断をミスしてしまう原因のひとつが、いわゆるストレスであり「疲れ」とも言えます。
私たちが普段、生活のなかでちょっとした判断ミス、ケアレスミスをしてしまうことがありますが、疲れているとそういうのが増えますよね。
脳幹もまったく同じで、あんまり疲れていると判断ミスを起こし、交感神経と副交感神経の切り替えタイミングを間違えてしまうことがあります。
あるいは、脳幹が物理的に圧迫されてしまい、正常に働けないこともあります。後半でご説明しますが、これが私たち整体師の本領である骨格のゆがみによる自律神経の乱れです。
このパターンの方もかなり多くいらっしゃいます。
その他、数え切れないような原因から、スイッチの切り替えがうまくできなくなり、
- 眠りたいのに眠れない
- 起きたいのに起きれない
- ご飯を食べたいのに胃腸が働かない
- リラックスしたいのに力が抜けない
- イライラしたくないのに感情が爆発しそう
ということが起こるのです。
自律神経は自分の意思ではコントロールできない働きです。
その為、自律神経自体を気合いで「交感神経、スイッチON!」と切り替えることはできません。
それが出来ればどれほど話が早いだろうと思いますが、それができてしまうと常に心臓を動かしたり、呼吸をすることを意識し続けなければいけないのでもっと大変です。
自律神経は私たちが仕事や趣味、食事や運動などを考えて楽しむことができるように、身体のことを代わりに請け負ってくれている、とてもありがたい縁の下の力持ちなのです。
3. 自律神経が乱れていることは「悪いこと」ではない?
整体師として10年弱、自律神経について色々と勉強し、色々なお客様と関わってきました。
その中で疑問に感じたのは、「自律神経が弱い」とか「自律神経が悪くなって」という表現は正しいのだろうか?ということです。
自律神経は身体のほとんど働きを、私たちの意思とは別に、代わりに請け負ってくれています。
ビジネス的な表現をすると、専門家に外注しているようなものです。あるいは、スタッフを雇用して業務を任せているとも言っていいかも知れません。
その働きが自分の意に沿わないからと言って「お前が悪い、お前が弱いせいだ」と責任をもっていくのは、在り方としてどうなのでしょうか。
あなたの自律神経の担当者であるあなたの脳幹は、自律神経が乱れている時に、果たしてサボっているのでしょうか?
そんなことはありません。むしろ、めちゃくちゃがんばってくれています。
先に述べたように、スイッチの切り替えの判断を間違うこともあります。
でも、それは脳幹が疲労困憊でついケアレスミスをしてしまったのかもしれません。
そして、それに気付かずに働かせ続けるものだから、ずっとミス連発をしているのかも知れません。
そうであるなら、自律神経は「弱い」とは「悪い」ではなく、「余裕がある」か「余裕がない」という表現の方が合っているのではないでしょうか。
ここで、松山整体院の「健康」に対する考え方をご紹介します。
コップを身体、中に入っている水をストレスとします。水がコップの中に収まっている状態が健康、水が溢れてしまった時が不健康な状態と考えます。
コップがしっかりとして大きい時は、多少ストレスが入ってきても平気ですが、コップが小さくなるとすぐに水が溢れてしまいます。
コップが小さくなる=身体の状態が悪い状態で、骨格がゆがんでいたり筋肉が固くなる、循環が滞るなどでコップが小さくなります。
ストレスは生きていれば必ず入ってきますから、コップが小さくなった分、すぐに水が溢れてしまいます。この溢れた部分が何かしらの症状であり、病気として現れるのです。
健康とは、ストレス(水)が身体(コップ)の容量に収まっている状態を言うのです。
自律神経でも同じように、コップを脳幹、水をストレスとして考えれば、コップに「余裕がある」状態なら心配はいりません。
しかし、何かしらの理由でコップが小さくなってしまえば、簡単に自律神経は乱れてしまうのです。
けれど、それは脳幹自体がなにか悪いのではなく、脳幹が弱ってしまうような疲労やストレスが掛かり続けていることで「余裕がなくなり」どうしようもなくなってしまうのです。
それなら話は簡単で、余裕を持てるようにしてあげればOKです。脳幹に余裕が持てるようなことを生活のなかで取り入れることで、自律神経失調症に対処できるようになります。
4. 脳幹に余裕を持たせる方法
先ほどの例えで言うなら、コップを大きくしていく方法を3つご紹介します。
これによって、余裕が生まれ、自律神経のスイッチの切り替えを間違えにくくなります。
しかし、あくまで余裕を持たせるだけなので、切り替えが100%正しくなることはありません。
交感神経、副交感神経のスイッチの切り替えには、脳幹の判断だけではなく、身体から脳へ届けられる情報が正確かどうか、その信号がそもそもちゃんと届いているのか、といった別の問題もあります。
これらについては、後ほどご説明します。
何はともあれ、まずは症状を楽にすることからはじめてみましょう。
① 首の負担を減らす
まずはじめにしていただきたいのは、脳幹への物理的な圧迫を減らすことです。
脳幹は図にあるように、脳の中枢、最も奥深いところに位置していますが、実は頭蓋骨と首の骨の境目からとても近い位置でもあるのです。
その為、頚椎(首の骨)がずれていたり、首から頭にかけての小さな筋肉が固まっていると、その圧迫を脳幹が受けてしまいます。
どうやって圧迫を減らすのかというと、首に掛かる負担を減らすことです。
特に、座っている時の姿勢や寝ている時の枕によって負担が大きく変わるので、そこから見直していきましょう。
首に負担が掛かりにくい座り姿勢のポイントは、実は足の置き方にあります。
イスであれば足裏のかかとが床にきちんと付くように座ってみましょう。床に座る時は、左右のかかとが身体にできるだけ近い位置に来るように座ります。
正座がベストですね。
足の置き方を変えることで、自然と腰の位置が変わり、背筋が伸びるのがわかると思います。
枕の選び方については、かなり個人差があるので難しいのですが、寝ている時の頭の位置が安定していることが首の負担を減らすので、まずは「高さ」と「固さ」に注目して合わせてみましょう。
高さは仰向けで寝た時に、顔が水平になっている高さがベストです。
それよりも高いと首が身体に引っ張られ、低いと頭の重さで首が引っ張られます。
固さはできるだけ固いほうが首の負担が減りますが、カチカチだと頭がごろごろ動いて不安定になるので、頭を乗せた時に少し凹みができるくらいを目安にしてみてください。
あまり沈み込むようだと、今度は寝返りが打てないことが首の負担になるので注意してください。
他にも、きちんとした整体院などに掛かって、骨格の調整を受けることが一番効果が早く出ます。整体師の本領ですので、地域で評判の良いお店を調べて相談してみることもおすすめです。
② 刺激を減らす
脳幹は身体から入ってくる信号(刺激)をもとに、自律神経のスイッチの切り替えを行っています。
その刺激が入れば入るほど、処理しないといけない情報量が多いので、脳幹が疲労しやすくなります。
その為、刺激量を減らすことで脳幹の仕事量を減らすことができます。
刺激も大小さまざまですが、刺激量が多く、かつ、意識すれば変えやすいものをご紹介します。
・スマホやテレビ画面の光
スマホの画面の光は刺激が強く、寝る前に見ない方がいいとよく言われています。
こういった画面から出る光にはブルーライトが含まれており、これがあまり良くないということなのですが、正確には「夕方以降は見ないほうがいい」ものです。
ブルーライトは太陽光と似た光なので、日中に見るのはそれほど悪影響がありません。
しかし、夕方以降の日没した時間帯は本来日の光を浴びないはずなので、スマホやテレビを見すぎると脳が「あれ、まだお昼?」と誤認してしまいます。
また、純粋に光量が強いので、視覚的に刺激量が多くなってしまうので、夕方以降のスマホやテレビ画面を見る時間を短くするようにしましょう。
・イヤホンなどの音
音も刺激ですが、特にイヤホンなどで耳に直接音の発信源を取り付けている場合、脳への刺激量が過剰になりがちです。
なかには、寝る時にヒーリングミュージックを掛けながら寝るという方法を取り組んでいる方もいらっしゃいますが、脳幹の疲労を考えると控えたほうが良いでしょう。
音が無いと眠れない、落ち着かないという方は、イヤホンではなく身体から離れた位置に置いたスピーカーから流すようにしてみてください。
・甘いもの、辛いものなどの劇物
味覚としての刺激というよりは、内臓負担としての刺激を減らす為に甘いもの、辛いものを控えてください。
唐辛子やカレーなどに入っているスパイス系が刺激物であるのはイメージがつくと思いますが、実は砂糖などの甘味も身体にとっては刺激物となります。
できるだけ甘い物も控えた方が刺激量を減らせます。
ただ、糖質は脳のエネルギーなので、脳幹が疲れている時ほど甘いものを欲しくなります。
対策としては、甘い物ではなくお米やジャガイモなどの炭水化物を多めに食べることで、甘いものでなくても糖質を摂れるように食事内容に気を付けてみてください。
糖質制限をしている場合でも、いも系は食物繊維が豊富なので糖質の吸収が緩やかになります。干し芋をおやつとするのが個人的におすすめです。
③ 同じ動作を繰り返す
脳幹を休ませるひとつの方法として、同じ動作を繰り返す「反復運動」というものがあります。
同じことを繰り返すので、入ってくる刺激も同じものしか入ってきません。処理する側からすると仕事が簡単になります。
一番手軽なのは歩くことです。
その時に、できるだけ何も荷物を持たず、音楽を聴いたりもせず、スマホすら家に置いて近所をぶらぶら歩くことをおすすめします。
この時に大事なのは、目的を持たないことです。テキトーに歩きます。
それでも、できれば20分くらいは歩き続けると脳幹が一休みできるタイミングを作れるので、朝でも夜でもいいので、時間があるタイミングで取り組んでみてください。
5. 自律神経のスイッチの切り替えがうまくいかない他の理由
脳幹が疲労してしまい、判断ミスをして自律神経の切り替えがうまくできていないことが、自律神経失調症のひとつの原因です。
脳幹を休ませることでそのミスを起こりにくくするために、まずは3つの対処法を試してみてください。
ここからは、脳幹の疲労以外の原因についても補足としてお話していきます。
疲労も含めて、どれかひとつだけということではなく、色々なものが重なっているのが現実的な自律神経失調症の原因ですので、まずは脳幹の疲労を減らしていただき、ここからのお話はその次のステップとして参考にしてもらえればと思います。
◎その他の原因①「身体からの情報が間違っている」
脳幹は身体から入ってくる刺激(情報)をもとに、交感神経と副交感神経の切り替えを行います。
その判断材料となる情報が間違っていれば、当然、切り替えの判断も間違ってしまいますよね。
身体からの情報が間違っているというのはどういうことかというと、ひとつは身体の感覚器官が鈍くなっている状態です。
身体には色々なところにセンサーがあり、身体の内側と外側の状態を感じ取るようになっています。寒い暑いといった温度を肌で感じるのがわかりやすいですね。
自律神経失調症の方で、
「周りは寒いと言っているけど自分だけ暑くて汗をかいてしまう」
とか、反対に、
「自分は寒くて重ね着をしているのに、みんなは暑いと言う」
という方が多いのも、この感覚器官が鈍くなっているためです。
実際の気温が高くて体温が上昇していても、感覚器官が鈍くなっている為にそれがわからず、脳幹が「体温は正常だな、ヨシッ」と判断すると体温調節が働かず、周囲と感じ方が違うということが起こります。
この様に、身体から入ってくる情報が実際の状態と違うことで、脳幹がスイッチの切り替えを間違うことがあり得ます。
◎その他の原因②「信号がちゃんと届いていない」
自律神経を含め、身体は電気で動いています。
脳と身体の情報のやり取りも電気信号で行っているのですが、その信号がそもそもお互いにちゃんと届いていないことで自律神経の切り替えができないということが起こります。
正確には、電気信号が出ていないというよりは、信号は出ているけどそれを受け渡しする神経伝達物質が少ない、という現象が起こっています。
電気信号が手紙だとすると、神経伝達物質は郵便屋さんのような役割です。
手紙をいくら出しても、運んでくれる人がいなければ意味がありませんよね。
そして困るのは、すべてが届かないのではなく、中途半端に届くことです。
脳幹から身体への指示を10通の手紙に分けて出しているとして、その内5通しか届いていないと、指示が穴抜けなので身体は脳幹の思っている通りに動けません。その逆もしかり。
脳幹(上司)は「言った通りに身体が動いてくれない!」となるし、
身体(部下)は「現場は困っているのに上はわかってくれない!」という、
どこかでよく聞く話と同じことが起きているのです。
社会人の方はなんだか苦笑いしてしまいますよね。
脳幹も実は苦労しているのです。
6. おわりに
自律神経失調症について、なぜ原因がよくわからないのか、実際問題、どう対処すればいいのかについてお話してきました。
これはあくまで全般的な話になるので、人によって細かく違いがあります。
コップと水の例え話で言えば、コップの形や大きさも人によって違いますし、どこからどのくらい水が入って来ているのかも生活によって違います。
そして、実は一番大事な水を「捨てる力」も個人差があり、本格的に改善していくにはしっかりとヒアリングと検査をしていく必要があります。
ただ、私見ですが、その様に自律神経の問題を具体的に掘り下げて診ることができる病院、治療院はまだ多くありません。
なにせ、自律神経の原因が医学的に不明なので、仕方のないことではありますが、自律神経失調症でお悩んでいる方がこれだけいるのに、対処できる場所が少なすぎることが課題だと思います。
もちろん、当院の考え方がすべてではありません。選択肢のひとつ、参考のひとつとして、取り入れられそうなところを役立てていただければ幸いです。
自律神経専門整体の整体師として、自律神経のトラブルでつらい思いをする方を一人でも多く救えるように尽力していきます。
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