
第1章「整体っていつまで通えばいいの?」に答えます
2025.12.02
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第1章|身体は“今”だけでできているわけではありません

― 不調は「数日前」ではなく「数年分」の結果 ―
「最近、また肩こりが出てきました……」
「一度良くなったのに、戻った気がします」。
施術後に楽になった体が、時間とともに重く感じはじめる――
これは、あなたの身体が回復できなかったからではありません。
身体が長年かけて覚え込んだパターンへ自然に戻ろうとする力が強いだけです。
私たちは不調の原因を、つい直近の出来事に求めがちです。
「昨日スマホを見すぎた」
「冷房をつけっぱなしで寝た」。
もちろん影響はありますが、多くの場合、それは最後の一押しにすぎません。
コップに水が溜まり続け、縁からわずかにこぼれた“瞬間”だけを原因だと誤認してしまうようなものです。
実際には、その前に長く溜め込んできた
姿勢の崩れ・呼吸の浅さ・睡眠の乱れ・歯の食いしばり・慢性的なストレスといった“水”こそが本質的な要因です。
長年の前かがみ姿勢や片足重心、緊張すると肩をすくめるクセ、心配ごとで呼吸が浅くなる癖、
歯の食いしばりや噛み癖、小さな我慢の蓄積――
こうした無意識の反復は、筋膜の張力や関節の遊び、神経の通り方にまで影響します。
整体で正しい位置へ整えても、脳と神経は「これまでの使い方が正しい」と認識しているため、
しばらくすると元の使い方へ回帰してしまいます。これは「悪い癖」ではなく「慣れ親しんだパターン」。
だからこそ、責めるより“上書きの回数”が大切です。
根本改善とは、良い状態の上書きを地道に積み重ねること。
施術は上書きの「きっかけ」に過ぎません。
定着には、
(1)施術後の良い感覚を日常で繰り返す
(2)変化に気づく感性を取り戻す
(3)呼吸・姿勢・重心を自分で選べるようにする
この三点が肝心です。
スマホの誤変換を正すように、正しい選択を何度も“学習”させていきます。
初診時の身体は、その人の歴史を映します。
子育てや介護での前屈み、通勤での踏ん張り、
右利きスポーツによる片側優位、過去のケガの余韻……
それらが「今」に残像として現れます。
整体師が触れるのは筋肉や骨であると同時に、生き方の跡。目の前の痛みだけでなく、その奥にある使い方の物語に寄り添います。
整体の時間は、「今ここ」に戻る練習でもあります。
呼吸の深さ、力が入りやすい場所、重心の偏り、避けている動き――
そうした内側の感覚に気づく稽古。気づける身体は、悪化の前に自分でコース修正ができます。
痛みを取ることと、痛みが戻らない体を維持することは別物です。
メンテナンスは後者のための仕組み。
小さな歪みの芽を摘み、良いパターンを上書きする“復習日”。
今の身体は過去の集大成。未来の身体は今の選択の積み重ね。
焦らず、責めず、上書きを重ねるほど、あなたの「当たり前」は更新されていきます。

